最初のジーンズ Levi's 501

前回の記事で「中3のときにレッドウィングを買ったのが靴好きになったきっかけ」とうことを書いた。買ってからウキウキになってレッドウィングについて調べていると、どうやら「アメカジ」なる考え方があり、アメカジでイェーするにはジーンズが必須であることを少年は知ったのであった。

 

「ヒゲ」やら「ハチノス」やらの存在を知った後、当時15歳だった私はそのとき唯一持っていたユニクロジーンズにアタリがついているか急に気になりだした。タンスからひっぱり出したジーンズにはヒゲがくっきり付いていて、いたく興奮したことを憶えている。「ヒゲ!俺のジーンズにヒゲ!」みたいな感じで。ただ、いつから履いていたかとかどれくらいの頻度で履いていたか、なんていうことについては全く記憶がないので、果たしてそれが自然についたヒゲなのか、最初から加工されていたものなのかは分からない。「ハチノスは全然ついてないな」「ハチノスはどうやら付けるのが難しいみたいだ」「ホルモンみたいな名前だな」というような感想を抱きながらぽちぽちジーンズについて調べを進めていった。

 

という過程を経て、「じゃあブーツと同じようにジーンズも一から育ててみたい」ということになり、新しくジーンズを買うことにした。15歳、リジッド童貞を捨てた夏であった。

 

当時、私の頭の中のジーンズブランドといえば、Levi's、Lee、Wranglerの3つだけしか存在していなかった。「世界の3大ジーンズブランド!」みたいな記事で身に着けたペラペラ知識なのが丸わかりである。まあ、15歳でレプリカブランドにやたら詳しい奴がいたら、それはそれで可愛くなさそうだけど。無難そうなリーバイスを選ぶことにした。なんか501って、凄そうだし。

 

田舎には致命的なまでに服屋がないので、501もネットで買うことにした。今思えば、いくら田舎でもジーンズメイトとかライトオンにいけば、普通にリーバイスとか売ってそうなものだが。当時の私は生意気にも「この街にお洒落な奴は一人もいない」と訳の分からない主張をしており、そういう土地で服を買うという発想がなかった。大胆不敵な馬鹿である。まあ、店舗で買うよりネットで買う方が安いし、そういう意味では高校生らしい買物だったのかもしれない。

 

リジッドデニムについて調べると、「水に通すとこれくらい縮むからこれくらいの体型の人はこのサイズを買ったらいいよ」と表にまとめたサイトがあって、インターネットは何て素晴らしいんだろうと思いながら楽天を彷徨った。

 

購入したショップはFresh Boxさん。懐かしいなあ。501を皮切りに、ディッキーズのワークパンツとか色々買った。高校生の私にとってお洒落文化の発信基地がFresh Boxだったのだ。全然キャラでないのに、無謀にもプロクラブのスタジャンとか買ってストリート系に走ろうとしたこともあったな。

 

高校生だからクレジットカードは持っておらず、代引き引き換えで購入した501が家に届いた。「これ人が着るものなの?」と思うくらいにリジッドのジーンズは硬かった。小躍りしながら浴槽に湯をはり、そこジーンズをバシャーンと投げ入れて、もみもみしたりした。インディゴが溶け出てすぐに湯が青く染まって驚いた。そこに親父がやってきて、「湯につかったズボンをずっと眺めている息子」という今まで遭遇したことがないシチュエーションに若干戸惑いながら「何をしてるのか」と当然の疑問を投げかけてきた。私は糊落としが上手くいくか内心ドキドキだったのだが、こんな作業は慣れっこですよといわんばかりに「糊を落としてる。ジーンズの。」みたいな感じで格好つけて返した。ダサすぎる。ていうか何故親父に向かって格好つける。

 

親父は「そうか」とか言いながら、外から犬を連れてきて隣でワシャワシャと洗い出した。俺と犬は「何だろうね、このシチュエーション」といった表情でお互いの顔を見つめていた。犬は本当に表情豊かな生き物だ。

 

ジーンズが十分に縮むには湯につけてから半日置く必要あり」ということを思い出して、ずっと座って眺めておくわけにもいくまいということで、犬の洗体が終わったタイミングで浴室を後にした。

 

※「洗体」という表現が一般的なのかどうか分からなかったので画像検索してみたら、案の定スケベ画像ばかり出てきました。親父は犬にスケベマッサージをしていた訳ではなく、ごく普通に汚れを落としていただけでした。

 

この世で最も必要性のない注釈を書いてしまったが、ジーンズの話である。

 

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リジッドから9年の歳月が経ち、こうなった。9年も経ってたのか。ちょっとショック。夜な夜な変な文章を書くという悪癖が治っていない。大学の中頃からあんまり穿かなくなかったから、実質的な着用期間は4~5年だろうか。バキバキに色落ちしているわけではなくて、特徴がないのが特徴といった感じの、ジムカスタムみたいな色落ちの仕方。

 

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最近穿いていなかったが、こうして改めて眺めてみると、ここからガンガン洗いをかけてアイスブルーにしても面白いかなと思った。アイスブルー、流行ってるっぽいし。

 

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尻の部分は完全に色落ちしている。「ケツの青いガキ」と言われるとムッときそうだが、「アイスブルーのケツ」と言われると何だか爽やかに聞こえる。というか、さほどダメージのない紙パッチ、耐久性すごいな。さっきからフローリングが汚ねえのだが、入居時からある汚れで、とれない。まあもう出ていくからいいんだけど。

 

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ヴィンテージでもUSA製でもないただの501なので、セルヴィッチもチェーンステッチもない。「出生地はどこかね」と聞くと「メキシコだ」と帰ってきた。学生の頃、Tシャツ一枚にこの501を穿いて、400円で売られていたスリッパで近所の松屋に通うという生活を送っていたら、地面に擦れてしまったのかいつの間にか裾が破れてしまった。個人的にロールアップするときはセルヴィッチがあった方が良い気がするので、ロールアップして履くのもなんだかなあ、と思う。いっそのことバッサリ切ってしまおうかな。私のことだから適当に切って裾がガタガタになり、嫌気が差してゴミ箱いきになるのが容易に想像できる。やめておこう。

 

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ひとまず目指すはサワヤカアイスブルーにして夏用ジーンズにすることだろうか。夏に穿くには、微妙に暑いんだけど。

 

 

 

今回の曲

www.youtube.com

くるりで『三日月』。帰省したときには親父とよく中華を食いに行く。記事を書いてるときに親父が出てきたので思いだした曲。くるりの2人がただ中華を食ってるだけのPVなのだが、何故こうも感動させるのか・・・。

 

明日になれば 明日になれば 太陽がさんさんと輝いて

つらい涙も 悲しい気持ちも 全部風に乗って消えてゆくでしょう

 

この部分でちょっとうるっときた。コロナが騒がれだしたときには、「職場のクソ飲み会の幹事しなくていいのぉ?ヤッター!」とのんきなことを言っていて、「俺の場合はそんなに生活に影響しなさそうだな」とか思っていた。会社の飲み会は置いておいて、PVを見て「仲のいい誰かと一緒に飯が食えるのは幸せだなあ」と思った。そういえば後輩ともしばらく飲んでないなあ。オリンピック問題に地震と続き、何か明るい話題が欲しいところである。地震、このまま収まってくれるといいなあ。シュウマイ、食いたくなったなあ。新幹線で崎陽軒も、食えねえなあ。