男子中学生という生き物は、女子にモテるためにあらゆる手を尽くします。
彼らの大半の言動は「いかにして女の子にモテるか」という原理に従ったものです。
傍から見ていて非常に痛々しい。
今回は、自らの中学時代を思い出しながら、そういった中学生がやりがちな痛々しい言動のひとつを紹介したいと思います。
・ママチャリ原理主義
都会に生まれ、電車通学が主だった方には馴染みが薄い話かもしれません。
田舎の中学生は、ほとんどが徒歩または自転車通学です。
電車通学なんてオシャレなことはしません。電車通ってないから。
私が生まれ育った地域では、自転車に関する絶対的な原則がありました。
ママチャリ>>>>>棒チャリ
という原則です。
これがママチャリで
こっちが棒チャリって言われるタイプ。ハンドルが曲がっておらず、横一直線なのが、「棒」と呼ばれる由来でしょうか。
棒チャリに乗ってるヤツはイケてない。
ママチャリに乗らないとモテない。そういう文化がありました。
当然何の根拠もありません。
棒チャリに乗っているだけで後ろ指をさされます。
情報感度の低い新入生が棒チャリを買い、
入学後にダサい乗り物扱いされていることに気付き、買い換える。
そんな悲劇が後を絶ちません。
何を隠そう私もそうした一人でした。
今になって振り返ると、何とも下らないランク付けなのですが、
当時の私はママチャリに乗りたくて仕方がなかった。
友達と遊んだときに、周りが皆ママチャリだったときなんか悲惨です。
六本木の高級クラブに「わ」ナンバーの軽で来てしまったような感覚に陥ります。
そんなこんなで買い換えを決意。
しかし、入学してまだ数ヵ月です。
せっかくここに新品の自転車があるのに、親が新しいものを買い与えてくれるはずがありません。
「壊すしかない・・・」
と、本気で思いました。
中学生が一番恐れること、それは周りに「ダサい」と思われることです。
ダサくならないためなら自転車をも破壊する。
末恐ろしい生態です。
しかし、破壊方法を思いつかなかった私は、方法をアレコレ考えながら、屈辱の思いで棒チャリに乗り続けました。
そして、運命の日がやってきます。
当時私は部活動に入っていました。
練習が終わったのが19:00ごろ、帰りだしたのは19:30くらいだったと記憶しています。
辺りは既に薄暗くなり始めていました。
ママチャリを颯爽と乗りこなす友達数人と帰っていました。
もちろん、ママチャリに対する嫉妬と、我が棒チャリに対する怨嗟で腹の中はドス黒い瘴気でいっぱいです。
ふいに、友人の一人がこの棒チャリの運命を決定づける発言をします。
「おい前見ろよ・・・Aだ」
Aさんは、アイドル的存在の女の子でした。
同級生の男どもは大概この人のことが好きだったと思います。
Aさんがその場に現れると、周りの男子がなんかそわそわし始めます。
なんとかAさんの注目の的になろうと考えているのです。
当然私もその一人です!
帰り道でAさんと遭遇するなんて。
生きててよかったとさえ思います。(バカなので)
注目されたい。あわよくば面白いこととか言って笑わせたい。
中学生がこんなこと考えているときは非常に危険です。
モテるためなら何でもするのが彼らの生態ですから。
脳内でアホの成分がぶつかり合って分裂、臨界に達したとき、奇行という形で顕現します。
このとき私の脳内では臨海が起こってしまいました。
「チャリで全力疾走してAさんを追い抜いて、その後思いっきりガードレールにぶつかればAさんに注目してもらえるしチャリも壊れるやろ!」
正真正銘のバカです!
そして実行に移します!
全力で漕ぎました。ペペ・ベネンヘリばりに。
ガッシャーンという音とともに倒れこむ私。
そして達成感に満ちた表情でAさんを振り返ります。
正真正銘のバカです!(2度目)
当たり前ですがAさんはドン引きしてたと思います。
けど当時はそんなことは露ほどにも思わず、「明日からきっと話しかけてもらえる!」なんて思ってしまうところが中学生の怖いところです。
無事に(?)自転車も壊れ、7000円くらいの安いママチャリを買ってもらうことに成功しました。
ママチャリデビューを果たした私ですが、自転車1台の尊い犠牲を払いながら、
ついぞモテることはありませんでした。
当時の自分にアドバイスできるなら、
「モテたいなら自転車壊す前にさっさと家に帰ってドリブルの練習しろ」
とでも言いたいです。