掃除能力の無さと如何に向き合うか

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「ゴチャゴチャしたところが好きだ」ということについて過去に何度かこのブログでも書いてきた。神戸に住んでいた頃は、元町の高架下にはよく足を運んだ。最近買った本の内容を思い出すと、図らずも「ゴチャゴチャした環境での暮らし」をテーマに書いているものが多かった。沢木耕太郎の『深夜特急』、ジョージ・オーウェルの『パリ・ロンドン放浪記』、西東三鬼の『神戸・続神戸』など。『深夜特急』はまだ読み始めて間もないため何とも言えないが、それ以外の2冊は自分の好みドンピシャの内容で、読んでいて非常に面白かった。雑に内容を紹介すると、猥雑で不潔な街の中で、奇天烈な市民たちが繰り広げる出来事をまとめたルポルタージュのようなものだ。ユーモアもたっぷりで笑えるところが多い。

 

こういう類いの本を読んだ影響で、20世紀初頭の都市市民の意識が生活にも現れたのか、我が愛しきワンルームは荒れに荒れきっていた、と表現すると、「本のせいで部屋が汚くなりました」と都合がよく聞こえてしまう。本の内容関係なしに、私は掃除や整理整頓が苦手である。むしろ、不潔・猥雑さを一種の愛で包み込んだような描写をする本を読むと、深層心理で自分の弱点を肯定されているような気分になって、そういう本を好むようになったのかもしれない。

 

自分への意識付けのつもりで、「やはり掃除は精神衛生を保つうえで大切云云かんぬん」とブログでも綴ってきたが、結局のところ、整理整頓の意識という名の手綱が手を離れて、掃除不精という名のじゃじゃ馬が部屋を暴れまわって惨憺たる状況になる。見かねてまた掃除への意識付け、馬具屋にいって新たな手綱を買ってきて、暴れ狂う馬を鎮めて、また手綱を握りなおすのであった。それの繰り返しである。まあ、乗馬経験、ないんだけど。

 

我ながら上手い喩えだと思ったが、少し考えてみると全く不適当な喩えだった。この書き方だと、本のくだりと同じく「暴れ馬のせいで部屋が荒れてしまうんですよね」という風な受け取り方をしてしまうが、実際に部屋を好き放題荒らしているのは俺自身である。馬は俺である。まずここで破綻が起きている。百歩譲って、どうしても掃除が出来ない精神、いわば制御しきれない煩悩の化け物として馬を登場させたとする。そこで人間としての俺が、部屋を荒らされないために馬を御さなければいけない訳なのだが、馬に振り落とされている時点で御者失格だし、俺の場合もっと悪いことに、手綱を握り続ける努力もせずに、手綱を離して、馬からも降りて、「さあ暴れなさい」と馬を野放しにしているのも同然だった。それで後になって「こらこらダメじゃないかあ」と馬を慰めにかかるのであった。ダメなのはお前である。

 

本当の馬ならば、情けない御者のもとではじゃじゃ馬でも、優れた調教師とジョッキーによって三冠馬として輝くことが出来るかもしれないが、今回の場合は煩悩の化身であるため、どこかに売り飛ばして別の大人しい馬を買ってくるということができない。馬も俺だし、情けない御者も俺なので、両者に変わってもらう必要があった。馬にはみだりに部屋を踏み荒らさないような落ち着きを、御者には時に馬が興奮したときに毅然とした、それでいて馬を信頼したうえでの対応が求められる。人馬一体なのであった。

 

という妄想が済んだところで、「これは俺が単に人間としてダメなんではないか」という当然の結論に帰着した。

 

使ったものは元に戻す、ゴミはきちんと捨てる。ただこれだけの話なのだ。それを腹落ちさせるのに1400文字を使わないといけない時点でもう色々ダメである。

 

掃除をサボる。それによってその時には楽になるが、溜まれば溜まるほど後々面倒になるし、散らかった部屋では本を読むとか、考えをまとめるとか、生産的な活動が手につかなくなってしまうという点で実に不利益である。自炊は勿論、コーヒーを淹れる気にすらならない。

 

しかし、この世に生を受けて23年経っても出来ないことをいきなり出来るようにはならない気がする。自分なりの形でこの弱点と向き合わなければならない。ということで、最近実践しているのが、他人の生活に目を向けること。Youtubeで「山の中の小さな小屋で暮らしている」という内容の動画がおすすめに表示されたのだが、部屋のスペースどころか電気水道もロクにない環境で色々な工夫をしながら生活しているのを見ると、「ああ、人が暮らすというのはこういうことなんだな」と感心させられる。

 

服だの靴だのに注いでいる愛着を、自分の住環境に少しでも向けるための努力をしていこうと思う。綺麗な部屋が散らかっていく過程において、最初の綻びは衣類の散乱から発生するという話を聞いたことがある。ということで、まずは要らない服を捨てていこうと思う。

 

 

 

おまけ

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LVC買いました。