オカルト話

霊感は全くないのだが、オカルトは結構好きである。中学生のときは、洒落怖を読んでよく眠れなくなっていた。信じているわけではないのだが、コトリバコとか禁垢とか巨頭オとか、日本のどこかに存在してるのかなあと思うとちょっとワクワクする。あったとしても怖いので絶対に行かないが。活字で十分である。


身近な人に「心霊体験ってある?」と聞いてみると、「実は…」と滔々と語り出すことが意外と多い。身近な人からっそういう話を聞くと、霊的な存在が俄に現実味を帯びてくる。個人的には「そういう存在」はいるのではないかと思っている。絶対に見たくないし、感じたくもないけど。


唯一それっぽい経験をしたのが、大学2年生の頃。オチは特にないので注意されたし。私は大学2年生の夏休みを利用して自動車教習所に通った。9月半ばには免許を取得した。取得後3日後くらいの夜、田舎でやることがなく、暇だったので、どれその辺でもドライブしようか、ということになった。


「深夜にコンビニで買った缶コーヒーを飲みながらドライブ」というシチュエーションがハードボイルドに思えて、ワクワクしながら車に乗り込んだ。オシャレドライブになるはずだったが、田舎の夜道は想像以上に暗かった。助手席に座っていた頃には気にならなかったのだが、不思議なものである。というか、片田舎にプリウスではオシャレになりようもなかった。


「これ以上進んで帰り道が分からなくなってしまっても困るな」と思い、とりあえず左折して適法な道を引き返すことにした。


その左折した道が良くなかった。進むにつれ、どんどん道が狭くなる。視界も悪かった。引き返そうにも遅かった。免許取り立てで、暗い中をバックで戻れる技術がなかった。(多分今も無理) 慎重に進むしかなかったのである。てか、免許取り立てで夜に1人ドライブをするな馬鹿、危ないだろ。と、当時の自分を叱りたい。


無事、狭い道を抜け、少し開けた先に踏切があったので、一旦停止した。この踏切の辺りが妙に気味の悪い雰囲気だったのである。周りに草木が生い茂ってて暗いというのもあるが、えらく陰鬱な印象だった。


そして、女が立っていたとか、呪詛を吐きかけられたとか、窓ガラスが手形だらけとか、そんな展開は一切なく、無事家にたどり着いた。気味が悪いエリアは、歴史資料館の近くであり、何度か通ったこともある道だったのだが、夜になるとああも気味が悪いのかと不思議だった。何となく、母親に話してみた。


私「さっき資料館の近く走ったんだけどさ、なんか知らんけど踏切の辺りがすげー気味悪かったわ。」


母「あー、あそこは昔、首切り場だったらしいから、あんま近寄らない方がいいよ。」


ぞわわ~と鳥肌が立った。何でそんな重要情報を今更言うんだ。RPGとかでも最初の村で「〇〇地方は強力な魔物がいて危ねえぞ~近寄ったらだめだぞ~」と警告してくれるではないか。もっと早く言ってよそういうの。


「・・・ということがあったんだよぉ」と、学生時代働いていたバイト先の後輩の送別会で話した。1年半くらい前だったかな。すると、後輩のM君が「自分、幽霊みたことあります。」と言い出した。正直意外だった。M君は非常に真面目な性格で、消して無愛想ではないが、どちらかというと寡黙なタイプ。高校時代は野球部所属、あまりチャラついた話や大学生っぽいバカ話はしない人だった。こういう意外性がある人から怪談を聞くと、どうも本当の経験っぽく聞こえて、信じてしまう節がある。


彼が見た幽霊というのは、高校のときに通っていた塾に出没したらしい。塾が入っている建物は、「出る」という噂が結構出ていたということだった。ある日授業を受けていた時のこと。時刻は22:00くらい、ふと教室入口を見ると、小さな女の子が教室の中を見渡していたそうだ。「えっ!?」となった瞬間、もう女の子は消えていた。M君が隣の席の人間を見たところ、ガタガタ震えていたそうだ。そいつも目撃していたらしい。


「まあ危害加えてこないんだったら良かったね、ナハナハ。」みたいなことを言っていると、「実はもう1つあって」と、M君。君ィ、ひょっとして霊感があるなァ!?


ただ、これはどっちかというと笑える話だった。M君曰く、「この近くに首吊り公園という心霊スポットがある」とのことだった。実際度々自殺が起こっているらしく、地元の小学生の間では定番の肝試しスポットになっているようだ。M君が高校生の時、体育大会か何かでグラウンドが使用できなかったらしく、野球部だった彼は、もうひとり野球部の同級生を誘って、どこかでキャッチボールをしようということになった。


めぼしい場所がなかったため、「もうここでええやろ」くらいのノリで首吊り公園でキャッチボールをすることになったらしい。ただその同級生という人物が、大変な霊感体質であり、色々なモノを呼び寄せてしまうため、常に数珠を携帯しているという愉快なステータスの持ち主だったそうだ。M君自身は首吊り公園のことを恐れていなかったが、同級生は怯えきっていたらしい。


公園内に入った瞬間、同級生が「やばい!ここはやばい!今すぐ帰ろう!」と絶叫しながらガタガタ震え出したそうだが、M君は「何言ってんねん」くらいに思ってボールを同級生に向かって投げたらしい。


M君「で、そいつがボールキャッチした瞬間、数珠が弾けたんですよね、パーンって(笑)」


M君の語り口があまりに軽かったので大層爆笑した記憶がある。M君も流石に気の毒に思ってその場を後にしたそうだ。M君が言っていたことが本当かは分からないが、嘘をつくようなタイプではない気がするし、話の内容も妙にリアルだったので、私の中では実話ということにしている。


ただ、オカルトの話になると人格が変わったように活き活きとしだす人間というのも結構いる。そういう人は怖い話を聞いたときのこちらの反応を楽しんでいるのだろう。極端な例だが、中学校の同級生の女の子(かなり大人しく自ら喋ることはほぼない)が、何かのきっかけでオカルトの話題になった時にやおら目の色が変わり、「私は見える」「あなたを霊視してあげる」「非常に悪いモノが憑いている」と騒ぎ出したこともあった。呪文を書いた変な紙も持っていた。多分、あれは中二病の類いだとは思うけれど。


霊視女子は置いておいて、結局のところ話の真偽は自分にガチの心霊体験がないので分からない。皆さんは、心霊体験ありますか?